2009年4月、立教大学チャペルに於ける立教セカンドステージ大学(RSSC)の入学式に列席した。荘厳で心の安らぎを感じるチャペルで、パイプオルガンの響きの中でのチャプレンの祝辞は、私にとって約50年間にわたる実社会で荒波にもまれた大航海の後、やっと波静かな入り江にたどり着いた思いであった。
妻がふと目にしたRSSCの入学案内がご縁での入学であったが、入学動機は残された老後を如何に生きるべきかの模索であった。
老後期は2期に分けられる。第1期は「老後期」で定年後から心身共に健康で他人の介添えなくても自分で元気に生活出来る期間。第2期は日常生活で第3者の介助を必要とする「老後の老後期」である。
第1期は人生の集大成期である。仕事だけの人生ではなく、人生の生き方、価値を探る時期である。この時期の過ごし方によって人生の価値が決まるといっても良いであろう。
第1期の老後期の生き方を「学びの情熱尽きることなし」の合言葉のもとに模索するのがRSSCの修学目標であろう。
選択科目であった立花隆先生の「20世紀と昭和の歴史」を受講している内に歴史の面白さに気付き、第1期の老後期の生き方の目標として歴史の勉強を継続してみようと考えるようになった。RSSC卒業後、各種教育機関の入学資料を検討の結果、慶応義塾大学通信教育課程文学部Ⅱ類(史学コース)に入学した。日本史,西洋史、産業史などを中心に学ぶ内に目から鱗の話も多く学ぶ楽しさを満喫しながら6年かけて2016年3月慶應義塾大学を卒業し史学士の学位を得た。これもRSSCで学ぶことの楽しさを動機付けして頂いたお蔭であると感謝に堪えない。
卒業論文は私が長年携わってきた工作機械の歴史「工作機械工業発展過程における技術導入の歴史的意義」とした。
現在、東京横浜独逸学園で週2回、大学在学中に消化不良であったドイツ語に再挑戦中である。年齢的に可能かどうか不安もあるが出来れば第2期「老後の老後期」を迎える前にドイツへ語学留学しながら卒業論文の延長戦上にある工作機械先進国ドイツにおける産業革命以降の工作機械業界発展過程の調査執筆が夢である。
喩え適わなくとも、命ある限り夢は持ち続けたいものである。
現在、政府は「人生100年時代」の到来に備えて再教育、即ち、リカレント教育の必要性に気付き、その充実を文部科学省で検討中である。リカレント教育で学んだ成果を個人の充実した生活に生かし、学びを通じて幾つになっても人とつながり、活動することが必要であるとして今改めて注目されている。
立教大学では政府立案の10年も前にリカレント教育の重要性を察知して「立教セカンドステージ大学」を設立し、すでに1000人を超える卒業生を輩出していることは、当時の関係各位に如何に先見の明があったかは明白である。
立教セカンドステージ大学の更なる拡充と発展を期待すると共に、卒業生各位が末永く社会との繋がりを持って心豊かな老後期を過ごされること切に願うものである。
二期生 藤田哲三
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